【司馬遼太郎原作「関ヶ原」】岡田准一主演映画を楽しむために知っておきたい基礎知識

徳川家康と石田三成の争いを描いた歴史小説「関ヶ原」。司馬遼太郎作品のなかでも極めて人気ですが、今回はV6岡田准一主演の映画化に向けて改めて注目されている本作品について、簡単に紹介します。

原作も大変面白いので興味を持たれたかたは是非読んでみてください。

 

 

関ヶ原の戦いについて

関ヶ原の戦いの真実

関ヶ原の戦いはわずか6時間で決着がついたこと、小早川秀秋の裏切りが家康の勝利を決定づけたということが有名だと思います。このことから石田三成は戦下手で、徳川家康は人望に厚いというイメージを一般的には抱かれているのですが、この小説を見るとその見方は変わってきます。

まず関ヶ原の戦いは合戦よりも政治戦争の意味合いが強いです。そのため開戦した頃にはすでに勝負が付いていました。本作品は上中下巻とありますが、実際に関ヶ原で決戦をするのは下巻になってからです。

また家康は人望が厚かったというのも少し違います。家康が勝ちそうであったため、家康に味方をした大名が多かったというだけのことです。そしてこのあたりは非常に現代的で関ヶ原の面白いところでもあります。つまり戦といえば御家のため、という義を重んじるイメージが強いと思うのですが、関ヶ原の戦いは徳川一族と石田一族の戦いではありません。三成に味方をする大名連合と家康に味方をする大名連合の戦いなのです。そして家康に味方をした大名は、家康が勝てば自分の家が有利になるというだけで家康に味方をしているのです。これは現代社会における会社の派閥争いに似たものがあります。この作品の上巻中巻あたりは家康の仕掛けるこれらの謀略について描かれています。

徳川家康はなぜ戦ったのか

家康に味方した各大名は、自分の利益のために戦いました。それでは家康自身は何のために戦ったのでしょうか。その答えは豊臣から天下を奪い取るためです。

今川、織田、豊臣と仕えてきた家康ですが、秀吉が死去したことで天下を奪うことを真剣に考え始めます。このとき自分を阻む力を持つのは秀吉と親しかった前田利家しか居ませんでした。秀吉在世時は、前田利家と家康の二頭体制となっていたのです。しかしその前田利家も寿命が尽き、家康を止められる者は誰もいなくなります。

この家康の天下取りを実現するため、家康の直属家臣である武将本多忠勝、武将井伊直政(おんな城主直虎の虎松です)、参謀本多正信らは動き始めます。

石田三成はなぜ戦ったのか

秀吉の天下を守るためです。家康がどんな理由を述べようとも、秀吉が「秀頼を頼む」と言って死去したにも関わらず、天下を豊臣から奪い取ろうとしていたことは誰の目に見ても明らかです。多くの大名はそれに目をつぶり家康に与しました。しかしこれに反対の声を上げた者達がいます。その筆頭が石田三成とその家臣である島左近です。秀吉からの信頼も厚く、五奉行の一人として可愛がられてきた三成には、家康の暴挙が耐えられなかったのです。

他にも上杉景勝、その家臣直江兼続大谷吉継宇喜田秀家真田昌幸らが三成の信念に従い仲間になりました。

西軍(三成軍)の裏切り者や傍観者達はなぜ戦ったのか

西軍の人数は東軍を上回っています。しかし、実際の合戦では、傍観して動かなかった部隊が多くありました。彼らはすでに家康と内通していたわけですが、それではそもそもなぜ西軍にいたのでしょうか。 

答えはこの戦いに乗り遅れたためです。三成も周到に準備してから家康との戦いを迎えています。そのため西軍は秀頼公のために戦うのだという大義名分を得ています。そしてこれをうまく断れず付き従ったのが、島津義弘長宗我部盛親小早川秀秋などになります。

また三成はわずか十数万石で人望も薄かったため、実は西軍の総大将ではありません。西軍は毛利輝元が総大将でした。しかしこの毛利家は家中の分裂により、家臣吉川広家が勝手に家康と内通し、合戦では傍観者となってしまいます。

 

登場人物について

石田三成(岡田准一)

頭が切れることから秀吉に重宝されるのですが、他人を気遣えない言動が多く、福島正則黒田長政加藤清正細川忠興など同じく秀吉に可愛がられてきた仲間から嫌われます。彼らが家康に味方したのは三成憎しが理由です。

岡田准一は冷徹な嫌われ者という役のイメージがあまりなかったので少し意外でしたが、数々の名演をしてきた俳優なのでとても期待しています。

初芽(有村架純)

実在の人物ではないはずです。映画ではくのいちという設定のようですが、小説では三成の家で面倒を見る若い娘であり、何度か関係を持ち三成を恋い慕っていたという程度の役でしかありません。司馬遼太郎はこのような若い娘との官能シーンを描きたがる傾向にあり、そのために登場させた人物なのだと思います。

戦いの展開に無関係であるため小説で初芽はほとんど登場しません。そういえばいたなあという印象です。この役に有名女優を据えた点は、原作ファンとして少し懸念しているところです。関ヶ原の戦いを2時間にまとめるのは難しく、初芽を取り上げる余裕はあまりないように感じるのですが。

島左近(平岳大)

三成の家臣ですが元は歴戦の猛将です。応仁の乱でも何度か登場した筒井家にかつては仕えていましたが、放浪していたところを三成が非常に高待遇で雇い入れます。自身の頭脳と左近の勇猛な経験をあわせれば最強であると三成は期待したそうです。

直江兼続(松山ケンイチ)

愛の兜で有名な武将です。上杉家に仕えており、三成と同様切れる頭脳を持っています。上杉が東北で、三成が関西で同時に挙兵し、関東の家康を挟み撃ちにするという壮大な計画を立てたのは、三成と兼続でした。