【ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門】MBAで学ぶ内容を初心者が理解するにはおすすめの入門書

本書は複数の講師による公演を文書化し、MBAで学ぶことの概要をまとめたものです。内容は非常にわかりやすく具体例も豊富にありますので、タイトルの通り入門書としてはとてもおすすめです。

 

 

 

本書の内容について

印象に残った部分をいくつかご紹介します。

異業種競争戦略

業界や業界を取り巻く環境がどのように変化していくのかを理解しないと、時代の変化に取り残されることになります、本書ではカメラ業界の場合を例に構造変化について紹介しています。

構造変化の予想をするには5つの視点で考えます。その5つとは置き換え省略束ねる選択肢の広がり追加です。フィルムがメモリーカードに置き換わり、フィルムの現像が省略され、レンズ付きカメラに束ねられ、アルバムからテレビやウェブなど写真の視聴方法が広がり、写真をメールなどで送りあうという使い方が追加されました。カメラ業界の話は私も聞いたことがあります。他の業界ではどのようになっているのか、検証してみたいと思いました。

 

マーケティング戦略

マーケティングではSTP(セグメンテーションターゲティングポジショニング)が重要です。さて、ポジショニングについては物的属性機能的便益心理的便益顧客価値の4つにわかれます。物的属性は数値やスペックの優劣を訴求するものとなりますが、顧客が本当にそのスペックを求めていなければ意味がありません。顧客価値は抽象的になりやすいのですが、顧客の心情に当てはまるものであれば訴求効果は絶大なものになるでしょう。

本書では顧客価値をうまく提供した花王のエッセンシャルを例にマーケティングを紹介していますが、物的属性か顧客価値かどちらが良いというものではなく、両方の特性をうまく用いてマーケティングを行うことが重要なのだろうと感じています。

 

模倣困難性

模倣困難性については以前VRIO分析の項で紹介したことがあります。価値が優れ、稀少性が高く、模倣困難である製品を優れた組織で提供すれば、競争優位に立てるというものです。本書ではLCCで莫大な利益を上げているサウスウエスト航空の模倣困難性を例に、その戦略について紹介しています。

www.worker-tokyo.com

さて、本書では企業の競争優位を高めるには、資源活動差別化が必要だと述べています。サウスウエスト航空では、ボーイング737に特化した資源を持ち、中規模都市を直行便で結ぶ活動を行い、低運賃と頻繁で信頼性の高い発着時間という差別化を実現しています。この章では、他の航空業界がなぜ同じビジネスモデルで参入できないか(模倣困難なのか)について分析されており、読んでいてなるほどと感じる部分が数多くありました。

 

オペレーション

私の会社も本章で扱われるような現場部門を持つ業態なので、非常に興味をもって拝見しました。ここではビジョンを実現するには、戦略オペレーション(=現場力)の両輪がバランスを持って回ることが大切だと主張されています。

オペレーション(現場力)の例として、JRの車両メンテナンスやトヨタの自動車製造ラインでは年間数十万件の業務改善が提出されており、現場社員が一体となって改善活動に携わっていると賞賛されています。さて、この点において、果たして実態はどうだろうかと疑問に感じます。年間数十万件の改善案とのことですが、その内容には数合わせのような、とりあえず提出しなさいと言われたので取り組みましたというような低レベルなものは含まれていないでしょうか。現場全員が一体となっているように書かれていますが、本当は出世意欲の高い一部社員だけががんばり、残りは指定されたノルマを果たすために無気力に提出してるということはないでしょうか。同じような現場部門を見ている私としてはその点の実態が、きれいに隠されているように思えてしまいました。もちろん本章の内容がそのまま事実とするならば、素晴らしいことです。

 

リーダーシップ

リーダーシップには3つの要素があるそうです。これはビジョンとディレクション、コミュニティー、バリューです。つまりビジョンを示し、フォロワーに支持され、結果を残す必要があるということになります。リーダーを取り巻くグループには、コミュニティーとソサエティーがあり、コミュニティ(支持者)の満足度を高めるだけでなく、利害関係にあるソサエティー(利害関係者)にもバリューを提供しなければなりません。

 

アカウンティング

私は会計の勉強は最低限してきたため、目新しいことは少なかったのですが、貸借対照表の見方については、なるほどと思った部分があります。それは、安全なバランスシートは資産の上(流動資産)が大きく、負債は下(固定負債、株主資本)が大きいというものです。バランスシートの上部にあるものはすぐに流動するので、現金などの資産が多いと安心でき、固定負債が多くあるとすぐには負債を払わなくてもよいため安心できるということになります。

 

経営者の役割

本書の最終章にあたります。経営者に必要な能力は、ビジネスに必要なコアスキルに加え、人間力も必要です。前者はビジネススクールで学べますが、後者は日々の生活のなかで身に着けなければなりません。

それではビジネスに必要なコアスキルとは何かというと、経営戦略の立案と展開、マーケティングマネジメントの理解、アカウンティングの理解と事業戦略へつなげるロジックを持つこと、短期中期長期ごとの経営戦略実行シナリオを構築する能力、経営戦略を実行させる組織人材マネジメント、組織オペレーションの6つです。本書では日産のゴーン氏を例にそれぞれのスキルを紹介しています。

これらの知識と実践によりコアスキルを習得することに加え、土台となる体の強化、人間力を備えた後、専門スキルと判断力及び実行力を得ることが、経営者には求められます。小さい組織でもいいので、とにかく早い段階でマネジメントに関わることの重要性が説かれています。