【Personal MBA】独学でMBAに匹敵する知識を本書で得ることはできるのか

話題となっていたビジネス書であるPersonal MBA。原本の著者であるジョシュ・カウフマンはP&Gで働きながらビジネス書を読み漁り、その中で良書と思われるものを自身のサイト「Personal MBA」で公開しました。これが多くの人を惹きつけ、ビジネススクールに通わずとも、それに匹敵する知識を得られると注目されています。出版されている本は、彼が中でも大事であると考えているエッセンスを抽出して、網羅的に紹介しているものです。

私は、〇〇のための30の法則といった本は好きではありません。ひとつひとつの内容が薄いからです。本書もその形式に倣っているため、正直期待していなかったのですが、意外と新しい視点もありました。今回は一部を紹介することで、読むだけの価値があるかどうか判断してもらえればと思います。

 

 

本書のエッセンスの一部

2章 価値創造

  • シャドウテストやmevoにより事前にフィードバックを得て、それから改善を継続するのが事業の始め方である。
 

3章 マーケティング

  • マーケティングは注意を引くもの、販売は契約までのものであり、言葉の意味は大きく異なる。
  • マーケティングは潜在顧客に認知してもらうことが重要であり、受容には「いつ」と「何」が適切でなければならない。
  • 儲からない客は受け入れないほうが賢明。
  • ベビー用品を扱う会社などは市場エントリー(出産によってベビー用品を急に探し始めるタイミング)を特に注視している。
  • 自分の提供品を売るのではなく、相手が欲しいと思っているものが役に立つことを伝える。
  • 無料のものから引き入れる。
 

4章 販売

  • 値段は常に動いており一定ではない。
  • 値段設定には4つの方法がある。それは取替えコスト方式(交換にいくら必要か)、市場比較方式(同じものがいくらで売られているか)、DCF及びNPV方式(時間と共にいくらの価値を産むか)、価値比較方式(特に価値があるかを検討する)である。
  • 共通の通貨は、資源(お金)、時間、柔軟性(仕事で拘束されることは柔軟性を失っている)の3つである。
 
 

5章 価値提供

  • 規模化により店舗や市場拡大することが重要。
 

6章 ファイナンス

  • 利益を得ることが仕事のすべてではない。充足点を知ることが大事。
  • 増収には4つの方法しかない。それは、顧客数を増やす、平均取引規模を拡大させる、各顧客の取引頻度を高める、価格を上げることである。
 

7章 人の心

  • 脳はたまねぎモデルで簡単に理解できる。それは中心から本能、感情、論理の順に層構造となっている。
  • 人は認知によって制御される。許容範囲を外れたと気が付いた時に行動をおこすのである。その許容範囲を参照レベルと呼び、人によってこの基準は異なる。そのため行動も変わる。
  • 参照レベルに迷いが生じた時に再構成が起こる。これは自分探しのことだが、とても自然なことであり、その気持ちに素直に従うことが大切である。
 

8章 自分と向き合う

  • 人は単一理想主義(ひとつのことにだけ集中する)である。従って集中できる環境を作ることが良い。裏を返せばマルチタスクはおすすめできない。近年の研究では否定されている。
  • タイマーをセットして、決めた時間だけはそのことに専念する方法がおすすめである。特に10分や30分と短い時間で行うと良い。
 

9章 他の人と向き合う

  • 権力からは避けられない。自身の思いを実現する努力をやめたとき、権力を相手に委託したことになる。それが嫌ならば、自身が権力を得るゲームに参加し、評判と影響力を高めることが大切である。
 

10章 システム

  • 複雑なシステムは単純なシステムの複合や洗練によって作り上げられる。これをゴールの法則と呼ぶ。
  • システムに必要な資源には流入口と流出口がある。また資源を貯蔵するストックがある。預金口座などはこのストックにあたる。
 

11章 システムの分析

  • サンプリングや平均の考え方などについて紹介
 

12章 システムの改善

  • エラーを素早く見抜かなければ自動化されたシステムの損失は増幅する。自動化によって人の労力は減るが、人の関与はむしろ増加するだろう。

 

本書に対する私の考え

上記で挙げた各エッセンスについて、本書がこれ以上の詳細を書いているかといえば、そうでもありません。本書の前書きや後書きでも目にするように、あくまでビジネス系のエッセンスが書かれた辞書だと思って読むのが一番だと思います。

また、具体的な実践例などが書いてあるわけでもありませんので、本書を参考に業務改善や戦略立案ができるようになるということでも決してないでしょう。結局のところ、これらの知識を頭の片隅に入れておき、何かがあったときにツールとして引っ張り出すしかありません。ツールにできるかどうかはいまいち不明ですが。

おそらくPersonal MBA(公式サイトのほうです)に挙げられるビジネス書を読破すれば、MBAで知識として得られる部分は身に付くのではないかと思います。もちろんディスカッションなどの力は得られませんが。結局ビジネススクールというものは、業務改善や課題発見の普遍的なセオリーを教えてくれるものではなく、割と抽象的な理論を元に、自分で思考することを求める場なのではないかと感じます。そうであるならばMBAを取得するよりも実務経験を積むほうが良いのではないかと思ってしまいました。MBAというものにいくらか憧れを持っていた私にとっては、なんだこの程度のものかというがっかりした気持ちが残る一冊でした。

本書を読む価値があったかといわれると正直疑問に感じますし、これによってビジネスに対する思考力が高まったかと言うとそれもありません。